こころの体操(産業医コラム)

がんばりが限界になっていませんか?

こんにちは、産業医の得津です。

 

2020年3月の感染者の急激な拡大やその後の政府の緊急事態宣言から、約半年が経過していますが、新型コロナウイルスにおける影響は様々なところで続いています。この状況は感染症による一種の「災害」であるとも言われています。その影響が今も続いていると考えられるのです。

 

東京都福祉保健局の「災害時の心のケアの手引き」では、災害発生後の心理的経過が、茫然自失期、ハネムーン期、幻滅期、再建期の4期間に分けられています。これにもとづくと、3月が災害発生と考えれば、今は幻滅期に差し掛かっている段階だと考えることができるでしょう。幻滅期の特徴として、ハネムーン期でのとっさの連帯と感情の共有によって支えられていた現場の忍耐が、時間の経過とともに限界となることで、不満や怒りといった感情が生じ、コミュニティの連帯が低下するといわれています。

 

これを今回の新型コロナウイルスに当てはめて考えると、急激な生活環境や業務環境の変化が生じ新しい生活様式への適応をしているときに、負担がかかりながらもがんばっていた個人や組織が耐えられなくなり、心理的に余裕がなくなることから、うまく機能しなくなってくるということが考えられます。これは、感染防止対策などによる業務負担が高まっている現場だけでなく、様々な意思決定を迫られる組織上層部や、現場との板挟みになる管理部門でも同様の状況が生じると考えられます。

このように、生活習慣や生活環境、業務環境の変化によって生じた負担が慢性的なストレスとなって心理的な余裕をなくしてしまいメンタル不調を生じてしまうという相談が増えています。緊急事態宣言の際は、メンタル不調の方が受診ができなくなることで薬が飲めないといった影響や、業務負担が急増したことなどの、直接的な要因によるメンタル不調が主でしたので、急激な症状ではありますが、ある意味で対策も打ちやすいようなケースが多い印象でした。

しかし、最近は、ご本人自身もその要因がよくわからないため、直接的な相談内容とは違った思いがけない要因、それもしばしば多数の要因が絡んでいるといった状況があります。これは、新型コロナウイルスによる身の回りの変化が、「間接的に」メンタルヘルスに影響を与えている可能性があるということです。

 

たとえば、比較的多く飲み会をしているような外での飲酒習慣があった方が、自宅で一人で飲酒をするようになったことで、飲み会ができないことなどによるストレスと相まって、アルコール量が増えてしまい、いつのまにか軽度のアルコール依存症となってしまうような状況があります。実際、アルコール依存症の方が急増しているという報道もありました。

 

また、もともとメンタルヘルスが不調だったり心理的に余裕のない状態だった方にも大きく影響を与えていると思われます。業務負担が高まるケースではストレス要因も増えるため体調は悪くなることが多いほか、受診頻度が少なくなることで主治医からのアドバイスがこまめに得られなくなったということもあります。

 

また、職場での周囲のサポートがあって仕事を続けられていた方が、周囲の余裕が少なくなってしまったことによってそのサポートがうまく働かなくなり、残念ながら休職をしてしまったようなケースもあります。

復職訓練を行うリワークプログラムといった休職時の生活域でのケアがしにくい状況があるほか、復職時のハードルが以前より高まるなどの影響が生じていますから、これまでとは異なる方法でメンタル不調者の多面的なサポートを行う必要があると考えています。

 

そして、個人でのがんばりが限界に達する前に、周囲への相談をしたり、具体的な症状が出ている場合は受診をすることを検討してください。しかし明確な対策を考える心の余裕が無くなっているときもあるかと思います。そんなときには、当サイトのカウンセリング・LINEチャットを積極的にご利用ください。

 

参考文献:東京都福祉保健局の「災害時の心のケアの手引き」

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