こころの体操(産業医コラム)

ストレス反応はなぜ必要?

こんにちは。産業医の得津です。

 

「ストレスで疲れきってしまった」「ストレスでお腹がいたくなる」「ストレスで目が疲れれた」といったように、ストレスに対する私たちの体の反応がしばしば問題となり悩みの種となっていますが、そもそも体はなぜこのような反応を起こすのでしょうか?ストレスがあっても反応が起きないに越したことはないですよね?実はそれにもきちんとした理由があるのです。

 

そもそもストレス反応とは、人間が動物として進化してきた過程のなかで形作ってきた、生き残るために必要不可欠な仕組みなのです。

大昔のご先祖様が、草原を歩いているときに、不運にも大きなライオンに突然出くわしてしまった時のことを想像してください。すぐに私たちの心臓はドキドキし、手足は発汗し、筋肉は緊張し、目は見開きます。

大きなライオンに気づいた瞬間、ライオンから全力で逃げたり場合によっては戦うために、体が自動的に準備をしてくれているのです。これがストレス反応であり、約100年前にアメリカの生理学者キャノンがfight-or-flight(戦うか逃げるか)反応として考え方を提唱したものです。

 

そして、そのようなストレス反応を起こすことができた個体だけが今まで生き残ってきた私たちだというわけです。ストレス反応の中では、体の中では脳、ホルモン、自律神経が次々に連携し、お互いに調整しあうなど、実に良くできた仕組みが起きています。

今でも、怪我を避けるためのとっさの判断や、火事場の馬鹿力といった面で役立つことが大いにあるでしょう。

 

しかしながら、太古の時代には、そのようなストレスが長期間に渡って頻繁に続くようなことはあまりなかったに違いありません。また、感染症などの影響がもっと深刻だったため、ストレスの影響が生じるほど寿命も長くなかったと考えられます。

ですが当時は便利であった戦うための仕組みも、現代ではむしろ悪い影響を及ぼしてしまうこともあるのです。

 

たとえば、筋肉に多くの血液を送るために心臓がドキドキし続けることは、高血圧に繋がります。敵をしっかりと見るために目が見開きすぎることでまばたきが減り、ドライアイになります。戦うことには必要のない胃腸の働きを抑えることは、消化不良となるというわけです。

 

さらに、体はいつでも危険に対処できるように、目の前に大きなライオンがいなくても体を常に覚醒状態に保つようになります。

この状態が続くと、不眠となり、疲労蓄積、過剰な不安といった状態に繋がり、有限である心身のエネルギーを使い果たし、やがて調整機能が機能しなくなりバランスが崩れ、メンタルヘルス不調へとつながってしまいます。これを慢性ストレス反応といい、メンタルヘルスだけではなく、糖尿病やがんなど実にさまざまな病気の原因となります。

 

このように、適度な量のストレスであればむしろ生きていくためには必要なものだとも考えることができます。一方、長期に亘る過剰なストレスであれば、それが慢性ストレス反応を生じさせているかもしれませんので、そのストレスを軽減するための対処をしなければならないのです。

 

参考文献:
・Goldstein, David; Kopin, I (2007). “Evolution of concepts of stress”. Stress 10 (2): 109–20

・Carlson, Neil R. (2013). Physiology of Behavior (11th ed.). Boston: Pearson. pp. 602–6

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