こころの体操(産業医コラム)

解決できない問題のストレスをどうにかするには

こんにちは、産業医の得津です。

 

前回に引き続き、ストレスの対処方法をご紹介したいと思います。心理学者ラザルスは対処方法の種類は大きく分けて4種類あるとしました。

前回は、ストレスの要因となる問題そのものを自分で解決したり、解決に向けて誰かに支援を求めるという対処法をご紹介しましたが、問題を解決することだけがストレス要因の対処であるということはありません。

 

例えば、職場の人間関係に苦労していることがストレス要因になっていたとします。「あの人はなぜ自分の考えをわかってくれるのだろうか」「なぜあの人は自分に悪意をもっているのか」などと考えることがあります。

このような状況で、「あの人にわかってもらうにはどうしたらいいのか」「あの人を打ち負かすにはどうしたらいいか」といった解決策を考えることは、少なくともすぐには良い結果を得られないでしょうし、大きなエネルギーを必要とするばかりか、状況を悪化させてしまうことも考えられます。

 

  • 感情焦点型コーピング

このように、ストレスの要因を解決することが難しかったり、望ましくない場合、その要因が感情に悪い影響を与えないよう、ストレス反応である感情に働きかけて対処する方法を「感情焦点型コーピング」といいます。

具体的には、溜めてしまった感情を表に出したり、怒りの感情を抑えたり、諦めて状況を受け入れたり、ストレス要因に関わらないように回避したり、リラクセーションを実践するなどです。

 

感情を解放するには、例えば誰かに自分が感じている感情を打ち明けることによって、それが根本的な問題の解決にはならなかったとしても、少なくともストレス反応による感情への悪影響を抑えることができます。リラクセーションについては後の機会にご紹介したいと思います。

 

  • 再評価型コーピング

また、生じてしまった感情による苦痛を軽減するための方法の一つとして、ストレスの要因を肯定的に捉えたり、その中の肯定的な部分に注目するようにする「再評価型コーピング」があります。

 

前向きな感情に注目する方法は、単に問題から回避するよりはエネルギーを要する方法だと言えますが、回避や先送りよりも、長期的に見ると良い結果を得られると言われています。

これは以前にご紹介した「認知的評価」を再度行うことにより、良い評価に捉えなおそうとする働きがあるといえるでしょう。その出来事をそもそもストレス要因と捉えないような考え方をすれば、回避や先送りをする必要はなくなるのです。

 

先程の例での「あの人は自分に悪意を持っている」という考えを再評価するには、「指導のためにあえて厳しく対応しているのではないか。あの人は自分を困らせようとして悪意をもって接しているのではなく、単に組織の規律を守るために役割を果たしているだけなのかも知れない。」といった捉え方に変えていくことなどが考えられます。

「仕方がない」「どうしようもない」といったストレス要因が生じた場合は、悪い感情が大きくなってくる前に、この対処方法がうまく使えないかを一度は考えてみるようにしてください。

 

  • 情動焦点型コーピングを周囲がサポートするには

 誰かが相談を持ちかけてきた場合、「グチ」を聞いてほしいのかなと思うことがよくあるでしょう。

もちろん初めは根本的な解決方法を考えて「問題焦点型コーピング」を支援するのもよいのですが、そう簡単に解決できなさそうな問題だと思ったら、解決方法を提示するよりも、むしろその人の「情動焦点型コーピング」を促すようにしてみましょう。

「グチ」は聞くことに徹するのはよい、といわれるのはこのためです。この場合、溜まってしまった感情を表すことができるように、その方の感情を引き出してあげることを心がけるようにしてください。

 

参考文献:

Folkman, Susan; Moskowitz, Judith Tedlie (February 2004). "Coping: Pitfalls and Promise". Annual Review of Psychology. 55 (1): 745–74.

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