こんにちは、産業医の得津です。
全国的に新型コロナウイルスの感染者の数が多くなってきました。 今年の夏よりもさらに感染者が増えるといわれています。しかしながら、4月の時のように経済活動を再び止めることは難しいとされていることから、すぐに感染者を減らすことは難しいかもしれません。
このような状況下でも生活や仕事を続けていく必要がありますが、全く外出をせずに日常を過ごすことはできません。食材や生活必需品を求めに買い物をすることや、出かけることも長期的な心身の健康の保持のためには必要なものですから、「通勤や外出をする時に感染してしまうのではないか」と心配されて相談されるケースが再び増えています。
まず、通勤における感染の心配についてです。今のところ、タクシー等の運転手の感染例は報告がありますが、電車の車両内で大規模にクラスター感染が発生したという報告は世界でもないようです。これは、電車の車内では密度は高くなるものの、定期的にドアが開閉することで少なからず換気がされていることや、お互いに話をし続けるということがあまりないためと考えられます。
とはいえ多くの人が集まって移動していることには変わりなく、リスクがないわけではありませんから、時差出勤や自家用車や自転車などによる通勤をすることで、その心配を減らすことができます。地域の状況にもよりますが、介護現場で働くみなさんにとって利用者のことを考えれば、ご自身でお車をお持ちの方は、お車で通う方がより安全でしょう。
次に、外出における感染の心配についてです。よく「どこなら行っていいのか」という相談を受けることがあります。どこなら大丈夫というのはなかなか言いにくいことですが、例えば次のような場所は相対的にリスクが上がると考えられます。密閉空間であること、人の数が多いこと、接触する機会が多いこと、マスクを外す機会があること、呼吸の頻度が高いところ、体調不良者が多いところは、気をつける必要があるでしょう。
とはいえ、具体的にどこなら大丈夫かということを医学的に設定することはできません。例えば、単に飲食店といっても、感染対策がしっかりされた店とそうでないところや、食事をする方のふるまいによって、感染のリスクには差が出てくるためです。
ですから、「何らかの条件があれば絶対大丈夫」という基準が作れない以上は、勤め先が何らかの線引きをしなければなりません。「あの人の職場では、○○に行っていいと言われているのに、私の職場では行ってはいけないと言われている」というような話も聞きますが、職場によってリスクの取り方が変わってくるため、このような違いはやむを得ないといえます。
長期間、外出を自粛ばかりしていると長期的にはメンタル不調の原因となってしまうかもしれません。外出をする際にはどのようなことに気をつければよいのでしょうか。
まず、どこに行くにせよ、自分自身でできる範囲の感染対策を行うということです。手洗いやマスク装着、マスクを取る際は十分に離れる、という基本的な対策は常に行う必要があります。
次に、どれだけご自身が対策をしていたとしても、リスクが高いと多くの方が思うような人が集まる場所にはなるべく行かないということです。健康管理が甘く軽率な人と遭遇する可能性が少なからず大きくなってしまうからです。そのような人の中には実際にコロナに感染しているにも関わらず感染対策が不十分な人がいるかもしれません。
そして、自分でリスクをコントロールできる範囲で行動することです。人が近づいてきてもその人から離れることができなかったり、その場から離れることができないような状況に身を置くことは避ける必要があります。どれだけ自分が感染対策をしていても完全に防ぐことはできないわけですから、健康管理が不十分な人と接する機会は自らがコントロールして減らすことを考える必要があります。
さらに大切なのは、「新しい生活様式」を実際に生活に取り入れていくということです。これまでリフレッシュをするためにしていた行動ができなくなった場合に、安全な行動でリフレッシュするように切り替えていくということです。例えば、人が多く集まる場所でショッピングをしたり、飲み会をすることが楽しみという人は、ゆったりとした屋外で一緒に散歩をしたり、公園で日々ジョギングをするといった、あまりリスクが高くない行動でリフレッシュするように日々の生活を安全なものへ少しずつ変えていく必要があるでしょう。
参考文献:
厚生労働省 「新しい生活様式」の実践例 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_newlifestyle.html