JSここメン | 公益社団法人 全国老人福祉施設協議会

たばこを吸うとストレスは解消する?

産業医の得津です。

 

 

タバコを吸うとストレス解消になるのでしょうか。確かにタバコを吸った瞬間は頭がスッキリとした気がしてストレス解消ができたような感覚があるかもしれません。実際にタバコを吸っている方は、タバコを吸うことで感動的な問題や不安や抑うつという感情を改善してストレスを減らすことができると感じているという調査があります。

 

 

しかしそのようにして解消されるそのストレス自体もタバコが作り出したものだとすれば、それはストレス解消と言えるでしょうか。2014年の大規模な研究では、 禁煙した人の方が不安や抑うつ、ストレスが改善しているということが明らかになっていました。 また積極的な感情を作り出すとも言われています。

 

 

なぜこのような結果になったのでしょうか。それはタバコに含まれているニコチンの脳の中での働きによって説明することができます。 タバコを吸うとニコチンが直ちに脳に送られ、ドーパミンと言う脳内物質が放出されます。これによって満足感やストレスが取れたといった感覚が得られるのです。しかし、そのような状況を続けていると、タバコを吸っていない時にドーパミンが放出されにくい状態となってしまいます。タバコを吸わない限り満足感が得られにくくなり、イライラしたり落ち着かなくなってしまうということです。

 

 

つまり、タバコを吸っている人は、タバコを吸わない時にストレスが生じやすくなっている部分だけ精神的な負荷がかかり、メンタルヘルスになりやすい状態だと言えます。 このため、ニコチンを渇望してタバコが吸いたくなってしまうのです。 ニコチンへの依存症状態が続くと全体的にはかえってストレスが多い状態になってしまいますし、何より肺がんや心筋梗塞といった命に関わる病気になりやすくなってしまうということは言うまでもありません。 病気が発症しやすくなるだけでなく、発症した病気の治療成績が悪いということも言われています。

 

 

現在ではタバコの有害性を知らない方はほとんどいらっしゃらなくなりました。それは、裏を返すと、多くの方がタバコの有害性を知りながらタバコをやめることができないと言う状況でもあるといえるでしょう。それほどニコチン依存症から抜け出すことは難しいことなのです。ですから、何度も禁煙に失敗をして自信をなくしてしまっている人もいるかもしれませんが、そもそもそれは自分の意思が弱いからではなく、自分の意思ではどうにもならないものと考える方が良いかもしれません。

 

 

今では禁煙外来といって、薬やカウンセリングによって禁煙を支援してくれる医療を受けることができます。ニコチンパッチやニコチンガムを使ってニコチンへの渇望を和らげることが出来ますし、そもそもニコチンが欲しくなくなるような薬も使うことができます。このような治療は保険適用で受けることができますから、是非受診されることをお勧めします。

 

 

一方で、単にニコチンへの依存症があるというだけでなく、タバコを吸うという行動自体が習慣化しているという可能性もあります。タバコ以外の方法で休憩することができないと言う方もいらっしゃいます。 確かに喫煙をしていれば、一定の間隔で席を立ったり、喫煙所まで行くことによってちょっとした小休憩が出来ていたかもしれません。ですが今後、就業中の喫煙があらゆる事業所でできなくなる可能性も高いですから、タバコにだけ頼って休憩をするという習慣を変えてく必要があるでしょう。具体的には、休憩所で飲み物を飲んだり、ストレッチをしたりすることで気分転換をすることができるのではないでしょうか。周りの方がどのような方法でリフレッシュをしているのか観察したり尋ねてみたりすると良いでしょう。

 

 

禁煙をするとメンタルヘルス不調が改善するだけでなく、朝の目覚めがよくなったり、肌の調子が良くなったり、食事が美味しく感じると言ったメリットもあります。 周りの方にタバコの臭いについて気を遣わなくても良くなるという、コミュニケーション面でもメリットがあるでしょう。そして禁煙をすれば、時間をかけて肺がんのリスクを下げることもできるということもわかっています。今から禁煙しても遅いということはないのです。

 

 

まとめると、タバコによってストレスが解消されるどころかむしろタバコはストレスを増やしてしまうこと、ニコチンへの依存によって自分の意思ではなかなかタバコをやめることができないこと、禁煙外来に行けば保険適用で禁煙の支援を受けることができること、タバコをやめればメンタル面でも身体の面でもメリットが大きいことをご紹介してきました。

 

 

より多くの方がタバコをやめることができるように願っています。