JSここメン | 公益社団法人 全国老人福祉施設協議会

コミュニケーションがとても苦手に感じる方へ

こんにちは、産業医の得津です。

 

大勢の人前で話したりするのが苦手、何をするにも人の目が気になってしまうと感じている方はいらっしゃるでしょうか。もちろん、どんな方でもそのような状況では緊張を感じて思うように話したり、うまく振る舞うことができないことはあります。ただ、そういった不安がとても強くて日常生活や仕事に支障をきたしてしまうことがあります。

 

 

具体的には、初めて話す方や、上司といった役職の方に対して話をする際に、ドキドキと強い動機が生じて冷や汗が出る、顔が真っ赤になるという体験をたびたびするような症状が現れます。またそういった緊張や不安を避けるように、他人や上司と話をしたくないという気持ちが生じたり、実際に話すことができなくなってしまうような事も考えられます。

 

 

特定の人だけでなく、会議や面接などで自分が発言するような状況でも同様の症状が生じることがあります。「緊張しすぎて何も話せなかったらどうしよう」「間違ったことを話してしまったらどうしよう」という不安が強すぎて、会議に出るのにとても抵抗を感じたり、会議そのものに出られなくなったりしてしまうことがあります。

 

 

このような症状がエスカレートすると、接客などの業務に支障をきたしてしまって仕事をやめざるを得ない状態になってしまったり、面接が不安のために就職活動ができなくなったり、日常的な交友関係などの社会生活ができなくなってしまいます。

 

 

こういった悩みを持っている方は、そもそもご本人の性格としてそのような性質があるとういうこともあれば、過去に人前で失敗をしてしまったことがきっかけとなってしまうようなこともあるかと思います。

 

しかし、あまりにも人や周囲の目が気になりすぎてしまうような事があれば、悪化する前に精神科・心療内科を受診することを検討してください。症状によっては「社交不安障害」と診断されることがあります。

 

お薬によって症状が緩和することもありますが、最終的に仕事や生活での支障が生じないようにするには、医師などの指導のもと時間を掛けて行動や思考を変えていく必要があります。このため、治療には時間がかかるケースが多いと言われています。

 

特に業務上の要因が関係していたり、逆に仕事へ影響が生じている場合は、職場や産業医などの配慮や協力が不可欠となりますから、「自分の性格の問題」として我慢してしまうのではなく、「コミュニケーションでとても困っている」ということを上司や産業医に相談することが大切です。

 

このような悩みを相談された管理職の方は、相談をしてきた方の「考え方の問題」「やる気の問題」「経験不足が問題」として片付けてしまうのではなく、その訴えが過度に感じたり、実際に体調不良を生じている疑いがあった場合は、早い段階で産業医と一緒に対応するのが望ましいと言えます。

 

配慮の内容は、その方が何に対して不安を感じられているのかや、担当業務・職種によっても変わってきますが、一般に言えるのは、すでにメンタル不調となっている場合は、不安に感じられているコミュニケーションの負担を軽減させる必要があるということです。具体的には、電話対応の担当から離れてもらうことや、社外とのコミュニケーションが必要な機会を減らすといった配慮のしかたが考えられます。

 

もちろん、そのような配慮をずっとしていると、いつまでたっても本来すべき業務ができないということになります。ですから、不安を低減する配慮によってメンタル不調が十分に改善すれば、不安を感じる要因を特定することで、不安が生じる考えにご本人が気づき望ましい考え方に変えていくという段階へ移ることが必要になります。安心できる状況でそのような経験を積むために、職場と産業医による状況確認や配慮や、主治医と連携して治療していく必要があるのです。