JSここメン | 公益社団法人 全国老人福祉施設協議会

ストレスから立ち直る力をつけるには

こんにちは、産業医の得津です。

 

日常生活の様々なことで傷ついたり、気分が落ち込むことは誰にでもあると思います。 多少のことであればすぐに忘れてしまうかもしれませんが、ショックが大きい時や引きずってしまう時もあります。そのように落ち込んでいる状態から上手く回復するにはどうすれば良いのでしょうか。

 

 

心理的な傷つきから立ち直る回復力のことをレジリエンスと言います。一時的に落ち込んでしまった状態から立ち直って行き本来の心の機能を維持しようとする抵抗力のようなものです。これは誰もが持っている能力ですが、人によってその性質や強さは違います。

 

 

レジリエンスは様々な要素で構成されています。楽観的かどうか、忍耐して行動ができるか、社交的か、積極的に問題解決しようとするか、自分や他人の心理をよくわかっているか、といったものがあります。

 

 

このようなレジリエンスがうまく働かないとストレスを受けた時になかなか立ち直ることが出来ず長い間落ち込んでしまい、生活に支障が出たり、メンタル不調になったりしてしまうかもしれません。

 

 

レジリエンスは本人の性格的な特性による部分もあるとも言われていますが、幸いにして、このレジリエンスは鍛えることができると言われています。

 

 

他人との関係性を構築することは基本的な方法です。周りの人と繋がることで自分ばかりが辛い思いをしているわけではないということを思い出すことができますし、信頼できる人から自分の気持ちを理解してもらうことが大切です。信頼できる人はなるべく身近な方が良いですが、職場の外で探す事もできるでしょう。また一対一だけでなく何らかのグループやコミュニティに参加することも有効です。仕事以外の関係性を持っておくと良いでしょう。

 

 

次に、やはり体の健康を保っておくことが効果的だと言われています。 十分な睡眠や栄養バランスある食事といったポジティブな生活というものが不安や抑うつといった感情を減らすことができるのです。以前ご紹介したマインドフルネスも、日々の心の健康を保つために有効です。逆に、アルコールやタバコはストレスに悪い影響を与えるといわれています。

 

 

そして、日々の生活で何らかの目的を持つとレジリエンスを向上させることができるといわれています。 どうしても日々の業務に追われがちだと思いますが、 今おこなっている仕事の一つ一つがどのような大きな目的のためのものであるかということをイメージするとよいでしょう。

 

 

日々の徹底した感染対策は利用者の方の命を守ることですし、毎日のケアはそれぞれの幸せな人生を過ごしてもらうための活動です。 利用者のご家族に安心していただけるようフォローをするといった目的も、不安の多い世の中で大切な要素だと思います。

 

 

ストレスの多い出来事が起こった時には、それ自体がどうしようもなくただ苦痛に感じるだけの出来事だと捉えず、積極的に解決できる方法や、前向きな捉え方かできないか考えてみましょう。 失敗を学びのチャンスと捉えることもできますし、そのような体験を通じて自分が何にストレスを感じるかということを再認識することができます。

 

 

仕事で失敗をしてしまった時は「もっと悪い状態に繋がらなくて良かった。今後そのようなことがおきないようにするために対策を考えておこう」と思うこともできます。このように逆境を何らかの役に立つ機会だと捉えることができるのです。

 

 

万が一、本当にどうすることもできないような事が起こったとしたら、それは自分にはどうすることもできないことですから、ある意味悩んでもしょうがないと考えざるを得ないかもしれません。時にはそのような現実を早い段階で受け入れてしまうことで長い間ストレスを感じる状態を避けることができます。

 

 

もちろん、必要な時に助けを求めるということもレジリエンスを向上させると言われています。 信頼できる人に相談するのも良いですし、職場の出来事についてはカウンセラーや産業医といった専門家の面談を受けるというのも手でしょう。自分自身で何もかも全てコントロールできるわけではないということを知っておくと心の安定につながります。

 

 

このように、ストレスから立ち直る回復力であるレジリエンスは鍛えることができます。「自分はストレスに弱い人間だ」と思い込んでしまうのではなく、日々のストレスを「回復力を鍛えるチャンス」と捉えて、ストレスに強い体質を作っていくと良いでしょう。

 

参考文献:American Psychological Association. (2014). The Road to Resilience.