こんにちは、産業医の得津です。
ストレスを軽減するにはストレスの要因だけに対処するのではなくストレスに対する抵抗力を高める必要があります。ストレスの抵抗力を高めるためには心だけでなく体のコンディションも影響してくるため、生活習慣をいいものにすることが大切です。
今回はまず「運動」についてお話ししようと思います。運動をしてスッキリとした気分になったことがあると思います。こう言うと、「日々の仕事に疲れていて運動どころではない」と考えてしまかもしれません。しかし、そうやって運動を避けることでストレスの抵抗力を下げてしまっているとすれば、 ますますストレスが溜まり仕事場効率が悪くなり運動をする気がなくなってしまうという悪循環に陥ってしまうかもしれません。
また、「仕事の中で体を使っているので運動する必要がない」と思う方もいるかもしれません。もちろん、十分な運動量がある方は運動についてはたまに見直す必要がないかもしれません。しかし、仕事上での活動というのは、体の一部だけ繰り返し使ったりすることがあるのでバランスが良くないこともあるでしょう。全体の筋肉を鍛えることで腰痛を防止することにもつながります。また、仕事のことを考えながら運動をしていると、リラックスにならないことも多いのではないでしょうか。どのような方も自分の意思で運動をする機会も作ってみると良いと思います。
ですから、どのような形であれ運動を始めてみることを考える必要があります。では、どのように運動を始めればいいのでしょうか。運動をするとなると、「ジムに行かなくてはならないのではないか」、「ジョギング用のシューズを準備しなければならないのではないか」、「良い季節になるまで待とう」などとハードルの高いことを考えたり、先延ばしをしてしまうものです。
ですが、初めは運動のためにしっかり準備することは考えないでいいですし、運動の効果や量すら
あまり意識する必要はありません。運動少し続ければ、運動することでリフレッシュにつながるということを心身で感じることができますので、自動的にまた運動をしようという気になるのです。そこに頑張りなどは必要ありません。むしろ、頑張って運動しないことが大切です。頑張ってしまうと頑張りを続けなければならなくなり、精神的な負担にもなり、本末転倒となります。大切なのは、ほんの少しでもいいので、とにかく運動してみるということです。
そのためには、まずはたった5分や10分でも できるようなことを考えます。おすすめなのは、毎日必ず行うことと紐付けることです。たとえば、 駅の階段を使うというのは簡単に取り入れることができる運動習慣のひとつです。最近は健康志向の高まりで健康のために階段を使っている人も多いですから、一緒になって階段を上がることができますし、目立つこともありません。 エレベーターやエスカレーターを使うより時間も節約できることがあります。
このように毎日繰り返していると何の苦痛もなく続けられることがわかります。もちろんこれは少ない運動量ですので効果が目に見えてわかるというわけではありませんが、 もう少し運動することができそうだと考えられるようになると思います。このようにして、様々な所で運動量を 少しずつ上げていくことができれば、やがて睡眠の質が上がってきたり、頭の中がすっきりするような感覚が得られてくると思います。 そうすると自然に運動を続けられるようになるのです。目安としては1日20分程度することができれば効果が始めてくると言われています。これならば気軽にはじめてみようという気になるのではないでしょうか。
「どうすれば、日常的な行動に紐付けながら、頑張らずにほんの少しの運動から始めることができるのか」ということを今少しだけ考えてみてください。 そして、考えすぎる必要はありません。失敗をしてもいいですし、三日坊主でもいいので、 まずは、気楽に始めてみましょう。
参考文献:
Brown, J. D. (1991). Staying fit and staying well: Physical fitness as a moderator of life stress. Journal of Personality and Social Psychology, 60(4), 555–561.