みなさん、こんにちは。産業医の得津です。
どのような方もメンタル不調を起こしてしまう可能性はあります。早い段階で対処することができれば良いのですが、仕事の両立が難しくなるほど悪化してしまった場合は休職することも検討する必要があります。
ただ、休職している間にどのようにして過ごしてよいか見当もつかないと、休職に対して不安を感じてしまって、体調を大きく崩してしまっているにも関わらず仕事を休むことができずに辛い日々を送っていらっしゃる方もいるかもれません。
今回は休職をした際の大まかな流れについてお話ししたいと思います。もちろんメンタル不調や職場の事情は個人や職場によって大きく違うので、あくまでも例として参考にしていただきますようお願いします。
メンタル不調が悪化してしまいこれ以上仕事を続けると体調をさらに悪くしてしまう恐れがあるときは主治医の先生の意見を参考に職場と相談しながら休職をします。傷病手当金を申請する際は主治医の先生に書いてもらう書類などのやり取りがあります。また、休職の期間や復職の方法などについては職場の方としっかりと確認をしておくと後々のトラブルを避けることができます。
休職に入ると、まずは体調を安定させることを第一に考えます。仕事や仕事の環境が原因でメンタル不調になっていた場合は休職をすることでストレス要因が低減されるので体調が少しずつ改善に向かうと考えられます。
しかしながら、職場に頻繁に連絡を取ってしまったり、仕事のことの問い合わせが来たりなど、休職しているにも関わらず仕事のことを考えてしまうとストレス要因が十分に低減されないかもしれません。
そうなってしまうと体調の回復に時間がかかってしまいます。仕事はストレス要因となっている場合はなるべく仕事のことを意識しないで過ごすようにしましょう。
ストレス要因を低減させると同時に規則正しい生活を心がける必要があります。普段していた仕事をしなくなるわけですから生活は大きく変わります。ここで睡眠のサイクルが崩れてしまったり、あまりにも活動をしなかったりすると回復が遅くなるかもしれません。
ストレス要因が小さくなることによって徐々に症状が改善してくると、睡眠障害や食欲低下などの規則正しい生活を妨げていた要因が徐々に快方に向かっていくでしょう。
日常生活が少しずつ普通に行えるようになってきたら、前向きに考えることができるような活動をしてみます。復職に向けた支援プログラムである「リワークプログラム」への参加も主治医の先生と相談しながら検討してみてください(新型コロナウイルスの状況によっては一時的に実施状況が変わっているかもしれません)。感染対策に気をつけながら散歩や図書館など外出をしてみてください。
症状が改善してくるにしたがって精神的にも身体的にも回復し、前向きに考えることができるになってきます。症状や薬の調整も安定しにしよう生活が難なく送れるようになってきたら、仕事に対してもポジティブに捉えることができるようになってくるでしょう。
「復職したい」という思いが出てきたのであれば、復職時期について主治医の先生と話し合ってみてください。 復職することができるだろうという意見が出たら、職場と復職時期や復職後の仕事などの計画(職場復帰支援プラン)について調整を始めます。
復職が近づくと、それ自体が不安となって一時的に症状が出てきてしまうこともあります。
復職を前にすると誰でも不安が出てきてしまうのですが、その不安が大きすぎるとうまく復職ができないこともあります。このようなことは十分に起こりえる事ですから、その場合は復職時期を再調整する事も必要になるでしょう。一度決めた復職時期は絶対に守らなければならないということをプレッシャーに感じないようにしましょう。
どの程度体調が回復していれば復職できるかというのは一概に言うことはできませんが、少なくとも100%の状態でないと復職ができないというわけではありませんし、そのようなことは現実的ではありません。復職後に仕事や仕事の環境に適応するということで最終的な復職が完了すると考えられるからです。ですから復職後にうまく適応できずに症状が大きく出てしまうというのは起こり得ることです。
とはいっても再休職というのはご本人の自信をなくしてしまいますし、次の復職に対する不安の原因になってしまう恐れがありますから、再休職の恐れが十分に小さいと考えられる程度には復職時に回復している必要があります。この判断は個別性が高く一概には言えませんのでその時々のご本人の状況に合わせて主治医や産業医が判断します。
少なくとも、規則正しい日常生活を送ることができて、目立った症状がなく、仕事に関しても通常の7から8割ぐらいはできるのではないかといったところが目安になっているようです。
以上、大まかに休職の流れを紹介しました。様々な個人差があるとはいえ、休職をしてからは、まずはストレスの低減に勤め、症状の改善とともに日常生活を難なく送れるようになり、仕事ができるレベルまで回復する、というプロセスを経ることになります。
休職が必要な状態なのであれば、また元気に働けるようにしっかりと療養することが大切です。
参考文献:厚生労働省 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き