JSここメン | 公益社団法人 全国老人福祉施設協議会

メンタル不調は血糖にも影響があります

こんにちは、産業医の得津です。

 

 

定期健康診断の検査結果で血糖が高めの方もいらっしゃるのではないでしょうか。あまりに血糖が高いと糖尿病である可能性がありますが、糖尿病の初期段階では自覚症状がほとんどないために、未治療の状態でいつの間にか重症化していたということがしばしばあります。

 

 

実際、本来治療しなければいけないレベルの高血糖であるにも関わらず、治療をせずに放置している方が半分程度いらっしゃるということが問題になっています。 糖尿病は早い段階から気づくことができれば、食事や運動などの生活習慣の改善でよくすることができますが、重症化するまで放置してしまうと、薬による治療を継続しなければならなくなります。 その結果、腎臓が悪くなって透析をしなくてはならなくなる方が年間に1万5千人ずつ増えていると言われています。

 

 

このように、その発見や治療においても課題の多い糖尿病ですが、メンタル不調になると糖尿病にかかりやすいという調査があります。メンタル不調になって症状が出てしまうと、活動が低下したり、食事のバランスが悪くなったり、食べ過ぎてしまうなど、生活習慣に長期的な影響を与えます。さらに、糖尿病の治療は継続が必要ですが、継続的な治療をする意欲がわかなくなってしまうということもあるでしょう。

 

 

また一方で、糖尿病の方はメンタル不調になりやすいということも言われているようです。糖尿病の治療では、食事を制限しなければなりませんし、治療を継続したり血糖を気にしたりしなければなりませんので、何かとストレス要因ができてしまうからです。

 

 

特に夜勤の仕事をしていたり、残業が長い状態で仕事をしていると、適切なタイミングで食事をすることができませんし、睡眠リズムが崩れることは血糖のコントロールに対して悪い影響を与えるといわれています。このようなことから、仕事や生活と治療の両立ということがうまくいかないこともあります。

 

 

ですからあまりに糖尿病の治療コントロールが悪い場合は、夜勤や残業に対して就業制限を検討しなければならないこともあります。疲れている状態だったり生活時間に余裕がなくなることでストレス要因が多い状態では、適切な生活習慣の改善が難しくなるからです。

 

 

そしてそのような状況では、当然ですがメンタル不調が起こりやすくなります。糖尿病とうつ病を併発してしまうと、死亡のリスクや重症化のリスクが大幅に高まると言われています。さらに、糖尿病の重大な合併症である、腎不全や網膜症といった病気が悪化し、透析や失明の恐れが大きくなってしまいます。

 

 

糖尿病の治療中にうつ病を発症した方は、メンタル不調に気づかないケースが多いと言われているようです。ですから糖尿病を治療されている方は、ご自身の心の状態に十分気をつけていただきたいと思います。 糖尿病を発症していなくても血糖が高めの方に関しても同様です。

 

 

何事にも意欲がわかなかったり、漠然とした不安が続いていたり、睡眠に影響が出てきていたりするような時は、ひょっとして抑うつ症状が出ているのではないか、と考えていただくようお願いします。その場合は、主治医の先生にそういったメンタル症状を相談していただくとともに、糖尿病の治療コントロールを改善するという意味でも職場の方にも相談していただいた上で夜勤や業務負荷の見直しをする必要があるかもしれません。