JSここメン | 公益社団法人 全国老人福祉施設協議会

リラクゼーションの方法

こんにちは、産業医の得津です。

 

 

皆さんはストレスをどのように解消しているでしょうか。気晴らしをしたりストレスの原因を対処したりなど状況に応じて様々なストレス解消の仕方があります。ご自身なりのストレス解消法をしっかりともっていらっしゃるのであれば、ひとまずそれを続けていただくのが良いかと思いますが、効果的なストレス解消法がわからなかったり、別の方法を探していらっしゃる方もいるかと思います。

 

 

場合によっては間違ったストレス解消をしている方もいらっしゃいます。例えば、過度の飲酒は長期的に見るとメンタルヘルスに悪い影響を及ぼすといわれています。たくさんお酒を飲みすぎると睡眠の質が下がってしまうことで次の日のパフォーマンスが低下しさらなるストレス要因が生じるという悪循環が起きてしまうこともその要因です。

 

 

また、ストレスの原因を誰かのせいにしたり、怒りの感情をつのらせたりして、毎日のように愚痴を言い合うようなことや、ストレスの要因に対して懐疑的な行動を取り続けることも、長期的には良くないことと言われています。

 

 

そこで、皆さんに知っておいていただきたいのは、リラクゼーションという考え方です。リラクゼーションの状態というのは、単にリラックスしていてストレスがない状態というわけではなく、ストレスへの抵抗力の貯金のようなものだと考えていただいて良いかと思います。したがって、こまめにリラクゼーションの状態を作ることで、多少のストレスがあってもストレスが溜まりにくいような状態を維持することができるといわれています。

 

 

このリラクゼーション状態を作るには様々な方法があります。それらの方法のどれもが、活性化しすぎた交感神経を抑制し、副交感神経を優位な状態を作り出します。そして交感神経と副交感神経のバランスが良い状態を保つというものです。

 

 

具体的には、体の状態に着目する自律訓練法や、筋肉の力を徐々に解いていく漸進的筋弛緩法といったものがあり、テレビなどでもよく紹介されていますので、体験されたことがある方もいらっしゃるかもしれません。またアロマテラピーや音楽療法といったものは、ストレスの緩和の方法として広く知られています。

 

 

その中でも一人で手軽に実践しやすいリラクゼーションの方法として呼吸法というものがあります。これはご自身の呼吸に注目することで心の落ち着きをもたらそうというものです。古くは仏教の坐禅やヨガなどの手法として取り入れられている長い歴史を持つものです。

 

 

呼吸法も様々な方法があるのですが、一般的なのは腹式呼吸をするもの です。具体的には、まずは静かな場所で背筋を正して座ったり、楽な姿勢で横になったりします。そして、息を吸ったり吐いたりする時にお腹を大きく動かして、空気が肺にしっかり入って肺を大きく膨らませたり小さくしぼませたりするようなイメージを感じながら呼吸をおこないます。この時にできるだけゆっくり呼吸をすることが大切です。 目安としては7秒程度で息を吐き出した後に3秒程度で息を吸うようなリズムです。

 

 

そしてこの時に呼吸の数を数えておくと呼吸に集中しやすいのがポイントです。実際は呼吸以外の様々なことに注意が向いてしまうこともあるかもしれませんが、注意がそれてしまっていることに気づいたらすぐに呼吸に注意を向け直すようなことを繰り返してください。これをすることで徐々に呼吸だけに集中できるようになってきます。まずは3分程度から始めて15分程度続けられるようになると良いかと思います。

 

 

このような呼吸法をすると1回やっただけでもリラックスした気分になるかと思います。ですが、これを毎日続けることでリラクゼーション状態を深めることができると言われています。ストレスを感じやすいタイミングの後にすることもできますし、日常生活の決まりきったタイミングで実施することにすれば、毎日続けやすいかと思います。

 

 

このようなリラクゼーション方法を職場全体に取り入れる企業も増えてきました。実際に職員全体のストレス予防の効果に良い影響を及ぼしたという研究もあります。仕事にストレスはつきものですが、ストレスへの抵抗力を高めて、リラックスした状態で仕事が出来れば、メンタル不調を予防できるだけでなく、きっと、利用者へのケアも充実していくことでしょう。

 

 

参考文献:

J J van der Klink et al. The benefits of interventions for work-related stress. Am J Public Health. 2001 February; 91(2): 270–276.