JSここメン | 公益社団法人 全国老人福祉施設協議会

前向きな休職

こんにちは、産業医の得津です。

 

 

体調を崩しながらも仕事をがんばっている方が多くいらっしゃいます。特に多いのは腰痛やメンタル不調です。仕事を続けながら治療と両立している方もいらっしゃいます。

 

 

しかしながら、仕事に大きな影響が生じていたり、仕事をすることで体調に悪影響が出ていることがあります。それだけでなく、例えば体調が悪化することで仕事の効率が落ちてしまい、そのせいでミスが生じたりコミュニケーション上の問題が生じるなどして、負担が高まり、体調が悪化するような要因を作ってしまうことで、それが更なる体調の悪化を招くという悪循環を生じていることがあります。

 

 

そのような悪循環に陥ってしまっている状況では、そのまま仕事を継続していても体調は悪くなる一方でしょう。それでも仕事をしているかぎりは、求められている仕事をしなければならないと考えてしまいますから、そのギャップには大きな心的負担が生じます。

 

 

このような状況を継続していると、上司や同僚との人間関係が悪化したり、事故や大きなミスを起こしてしまうなど、重大な事態を招きかねません。人間関係は一度悪化してしまうとその修復に時間を要してしまいますし、事故によって大けがをしてしまうと簡単には回復できないこともあります。

 

 

事故を起こしたりしなかったとしても、そのような心身の負担が高まると、症状が悪化し、徐々に休みがちとなり、頭では出社しなければならないと思いつつも、心がブレーキを掛けている状態となり、結果、仕事に出てこれなくなってしまうこともあるのです。

 

 

このような深刻な状態となる前に、考えていただきたいのは休職です。休職というとネガティブなイメージを持っていらっしゃる方もいるかもしれません。たしかに、その間、自分がしていた仕事を誰かに任せなければなりませんし、仕事をしている日常が当たり前となっている状況でその仕事を休むという決断をすることは多少のハードルがあるのは確かです。

 

 

ですが、回復しにくい状態までに体調が悪化してしまう前に思い切って休職をすることによって、体力の回復を早め、復職後も健康的に安定して働くことができるようになれば、自分自身としても気が楽になるでしょうし、長期的には職場にとっても望ましい状態といえます。

 

 

収入や生活費についても心配することが多いかと思いますが、健康保険に加入している場合は条件を満たせば通常時の収入の2/3程度の傷病手当金が支給されます。職場の方や自治体の窓口でこの制度については相談することができます。

 

 

症状のために、本来しなければならない仕事のおおよそ半分近くがうまくできていない状態となっていたり、症状がどんどん悪化しているような状態であれば、主治医の先生と休職について積極的に相談するようにしてください。受診をしていなかったり、どこに受診していいかわからない場合は産業医に相談してみてもよいでしょう。主治医の先生から休職をしたほうが良いという意見をもらったら、早めに職場や産業医に伝えることで、休職に向けての調整や準備を進めることができます。

 

 

また、どのように復職すればよいのか心配になるかもしれません。復職の手順としては、まず体調が十分に回復して生活面で問題がなくなった後、主治医の先生と相談して、復職の時期を検討してください。この意見をもとに職場や産業医が具体的な復職の条件や時期の目安を調整することになります。とはいっても、その判断はシンプルで、普通に仕事ができるほどに体調が改善しているか、その時の体調に合うような業務があればよいのです。

 

 

このように、休職は決して後ろ向きではなく、むしろ、今後の健康的に働くために前向きに捉えるようにするとよいでしょう。

 

 

管理職の方におかれましては、何らかの病気や症状によって、休みがちになっている方や、仕事が相当こなせなくなってしまっているほどに悪化している方がいらっしゃいましたら、主治医や産業医と連携を取りながら、今後の悪化を考慮して早めの休職を検討し、職員の方の大きな健康被害を予防して頂きますようお願い致します。

 

 

人材不足が叫ばれて久しいなか、その調整は難しい側面もありますが、積極的な有給休暇取得や取り得る他の支援策について、今一度検証いただくことが、働く方々にとってより良い環境をつくることにつながり、事業所の魅力も高まっていくと思います。このような状況下であればこそ、働く職員のみなさまを支えていただきたいと思います。