JSここメン | 公益社団法人 全国老人福祉施設協議会

原因不明の症状はストレスが原因かも?

産業医の得津です。

 

 

原因がよくわからない体の症状に困っていらっしゃいませんか?

 

 

ストレスによって、抑うつ症状や不安などのメンタルヘルスの不調を引き起こすということはこれまでもお話ししてきましたが、ストレスが影響を与えるのは心だけではありません。ストレスによって体の症状が現れることもあるのです。 場合によっては心よりも体への影響の方が大きいせいで、身体的な症状の原因がストレスだとなかなか気づかれないこともあります。

 

 

このように、心理的な要因が原因で体の症状が現れるような状態を心身症と言います。 もちろんうつ病などのメンタルヘルスでも体の症状は生じますが、 精神的な病気ではないにも関わらずストレスなどによって体の症状が現れることがあるのです。

 

 

例えば、ひどい頭痛や腰痛などが続いているにも関わらずCTスキャンやレントゲンを撮っても何も異常がなく、神経内科や整形外科では症状の原因が分からないといった場合には、心身症の可能性があります。 また胃潰瘍などのように、臓器にあきらかな器質的影響が現れているということもあるでしょう。

 

 

このように、明らかに困っている症状があるにも関わらずどこの病院に行っても異常を見つけることができず、いろいろな病院や診療科を転々としてしまうということがあります。これはその症状の原因に心理的な要素が影響しているということが気づかれない場合にしばしば起こります。ですから、なかなか診断がつかずに困っているような場合は、もしかしたら心身症の可能性もあるかもしれないということを念頭に置いておいた方が良いでしょう。

 

 

心身症と関連しているものとしては、例えば、胃のむかつき、頭痛、アトピー性皮膚炎、めまい、顎の痛みといった実に様々な病気や症状が挙げられます。

 

 

なぜストレスなどの心理的な要因が体に影響を及ぼすのでしょうか。このメカニズムはとても多彩であり、詳しくわかっていない部分も多いのですが、自律神経の機能のバランスが崩れてしまうことによって、ホルモンなどの働きが正常に行えなくなることで全身の様々な場所に不調をきたしていると考えられています。例えば、ストレスが多い状態になると胃酸がたくさん出すぎるため、これによって胃の粘膜が傷いて胃潰瘍や逆流性食道炎になってしまうということです。

 

 

このような心身症を治療するためには、症状を抑えるための薬が使用されます。これだけでも症状の悪化を防ぐことができるケースもあります。ただし、根本的な原因が日常生活の中でもストレスだということであれば、そのストレス要因やストレスだと感じるような解釈の仕方を変えない限り治療の継続が必要になってきてしまうこともあります。

 

 

日常生活のストレスによる生活習慣の悪化が関係していることもあります。例えば、ストレスが多い時に食生活が乱れて暴飲暴食をしてしまったりすると消化器系への負担の大きい状態が続くことがあるでしょうし、疲れが溜まってる状態では正しい姿勢の保持ができないことで頭痛や肩こりといった症状が生じやすくなっているかもしれません。薬だけでは解決できない問題もあるのです。

 

 

もちろん、ストレスによってメンタル不調が起こってしまった場合は、メンタル面での症状を緩和するための薬が必要になってきます。この場合は、単に体への症状を治療するだけでなく心の症状に対する治療も必要になってきます。

 

 

このように、一見すると見逃されがちな心身症を診療しているのが心療内科です。身体的な症状でもなかなか原因がわからなかったり、ストレスを感じていることが関係しているのではないかと思った時は心療内科で受診なさるとよいでしょう。