JSここメン | 公益社団法人 全国老人福祉施設協議会

新年度に向けたメンタル対策の基本

こんにちは、産業医の得津です。

 

 

第三波と言われる大幅な感染者数の増加は一段落していますが、高齢者の集団感染は様々な地域で断続的に続いています。介護施設の感染対策は未だ予断を許さない状況です。

 

 

このような状況で新年度を迎えるにあたり、新規採用や異動なさる方など、職場でも人の動きがありますので、働く環境には大きな変化がある職場もあるでしょう。この機会に改めて職場のメンタル対策の基本をおさらいしておきましょう。

 

 

職場のメンタルヘルスは4つのケアという考え方で対策をすることができます。

 

 

まず、自分自身がストレスを感じていることやメンタルの不調が起きている、または不調が起きそうになっていることに気づいて対処を行うというのが1つ目の「セルフケア」です。

 

 

そのためにはまず、職員のみなさんがストレスとは何なのかメンタル不調とはどういうことなのかということを理解していただく必要があります。特に抑うつ症状は、「心の甘え」 や「忍耐力の不足」などと誤って認識されてしまうことがあります。また、出ている症状が抑うつ症状の一つであるということに気づかないこともあるかもしれません。

 

 

そして強いストレスやメンタル不調が起きた時に、どのように解決すればよいのかということを知ってもらう必要があります。業務に関するストレス要因が大きいのであれば、自分がしなければならないとされている業務と、実際に自分ができることにギャップがある可能性があります。また人間関係に困っていたり、ハラスメントの被害を受けていることもあります。

 

 

どのような理由であれ、業務に関連するストレスであれば管理職の方に相談することを検討するのがよいでしょう。このように職場の中で管理者の方と一緒に問題を解決していくのが、2つ目の「ラインによるケア」といわれるものです。ラインによるケアをしっかりと行うためには、日頃から相談しやすい環境を整えておく必要があります。

 

 

「何かあれば相談してください」と単に言うだけではなかなか相談しにくいものです。雑談でも仕事のことでも良いですから、コミュニケーションを行う中で何らかの異変に初めて気づくことができます。定期的な面談を行うことでもこれを補うことができるでしょう。

 

 

職場の中に相談用の窓口がある場合は、 管理職の方に相談しにくいような内容でも相談することができるでしょう。このようなケアを「職場内スタッフによるケア」といいます。 管理職の誰もがメンタル不調に対して知識があるとは限りません。このような場合に、産業保健職や相談担当者が職場のメンタルヘルス対策の中心的な役割を果たします。

 

 

生活の要因によるストレスが大きいのであれば、それに対してどのような積極的な改善ができるかをやはり考えていく必要があります。実際に症状が出ている場合は、悪化しないうちに精神科や心療内科に受診し、メンタルヘルスの専門知識のもとで必要な治療があれば早めに検討しておくことが大切です。体調が悪くなればなるほど受診するのがより難しくなるからです。

 

 

このように職場の外の専門家に相談することを、「職場外資源によるケア」といいます。 日常生活に起因するストレスのことだけでなく、業務によるストレスを職場の中で相談できないようなことがあれば、地域産業保健センターの窓口に相談することで解決につながることがあります。

 

 

メンタルヘルス不調となっている方の多くが、何らかの人間関係に悩んでいることが影響しています。一度悪化してしまった人間関係は、その改善に多くの労力と長い時間がかかります。大切な人間関係に傷がつくことのないよう、ストレスが積み重なっていたり、メンタル不調のサインがないか、周りの方、そして自分自身の体調に注目する必要があります。

 

 

新卒採用など社会経験がまだ短い方は特に業務にまだ不慣れであることや職場の環境に適応するまで時間かかっていることなどが影響して、ストレスが強まっていることがあります。 そしてストレスやメンタル不調の知識もあまりないことが多いですから、こまめに話を聞いてあげるようにお願いいたします。