JSここメン | 公益社団法人 全国老人福祉施設協議会

相手の考えに振り回されていませんか

こんにちは、産業医の得津です。

 

 

周りに気を使いすぎて疲れてしまうということはないでしょうか。
本当は体力的に余裕がないのに仕事を頼まれたらつい反射的に受けてしまったり、本当は家に帰ってもやらなければならないことがたくさんあるのにプライベートの誘いを断りきれなかったりすることは誰にでもあるのではないでしょうか。

 

 

確かにコミュニケーションを円滑にするには、空気を読んだり多少の譲歩をすることは必要です。ただそれが続いてしまうと、大きな負担になってしまうことがあります。こういった負担に気付かずに、気づいときにはストレスが大きくなってしまい、メンタル不調に陥ってしまう方がいらっしゃいます。そして、体調がかなり悪くならないと誰にも相談できないということがしばしばあるのです。

 

 

これまでのご自身のコミュニケーションの仕方を振り返ってみてください。人にどう思われているかということばかりを気にして行動してはいないでしょうか。

 

自分の考えをはっきり言えずに我慢してしまい、相手の言われるがままになっているとように感じることはないでしょうか。

 

 

また、何か意見を求められたり相談された時に、相手が本当はどう考えているかということを重視しすぎて自分の考えではなく、単に求められていることを話してしまうということはないでしょうか。

 

 

このようなことの積み重なりでメンタル不調になってしまうことを防ぐためにも、まずは自分が周りに振り回されているということを気づけるようになることから始めましょう。

 

 

なぜ人の目が気になるようになってしまったかということには様々な理由がありますが、その一つの理由として、自分に自信がないということが言えるかと思います。自分の考えや行動に自信が持てないために、人に言われたことをとっさに優先することによって、その場しのぎをしてしまうということを繰り返している状態だと考えられます。

 

 

ではなぜ自信がないかというと、それは自己肯定感が少ないことが要因になっていることがあります。自己肯定感とは自分の存在や考え方を前向きに評価できるような感覚のことです。 自分のことを自分自身が肯定して認めてあげなければ、自己否定につながり、自分の存在意義は他人に求めてしまうことになります。その結果、他人の考えばかりを自分の考えや行動に取り入れてしまうということになるわけです。

 

 

ではどうすればこの状態を解決できるのでしょうか。自己肯定感を高めるには、少なくとも、まず自分が他人の考えや言動に左右されてしまっているという現実を見つめるところから始めます。この状態に関しては否定も肯定もせず、ありのままその現実を受け入れることが大切です。

 

 

そして次に、その時に、本当は自分ではどう思っているのか、本当は自分が何をしたいのかということについて考えてみることにします。人それぞれ異なる価値観や経験を持っていますから、どのような考えを持っていても自由です。どのように感じたからといってそれを誰にも否定されることはありません。むしろそのように感じられるのは、あなたがちゃんとひとつの心を持っているということの証だと言えます。心の反応は誰にも邪魔されることはないのです。ですからその反応である気持ちや考えに耳を傾けるようにしてください。

 

 

自分の気持ちや考えがわかったら、その考えをどのように相手に伝えられるかを考えます。そのためには、まず自分がどう感じているかということを率直に相手に伝えることが大切です。

 

 

例えば、時間に余裕がなく本当は行きたくない食事会の誘いを断る時は、その場しのぎとして「はい」と答えてしまうのではなく、「誘ってくれて嬉しい。本当は行きたい。」ということを伝えた上で、「残念だけど、子供が小さくて夜は行くことができない」と伝えることがいいでしょう。余裕があれば、代わりの提案をしてみてはいかがでしょうか。例えば、「近くのランチはどうですか」といったようなことです。誘ってくれたことに感謝をしている自分の気持ちや、誘いに乗ることができない本当の理由を伝えて納得してもらうことができれば、相手は気分を悪くすることはないでしょう。

 

 

仕事に関しても同じことです。例えば、体力的に余裕がなくて頼まれた仕事をすることができないと感じた時は、「確かに大変そうだから、私も手伝いたい。でも私もどうしても明日までしなきゃいけない仕事があって手伝うことができない。ただ、明後日なら少し時間に余裕があるからそれまで待ってもらえる?」といったように自分の気持ちと事実を絡めることでしっかりと自分の考えを相手に伝えて納得してもらえるようにしましょう。

 

 

このようなことは考え方や話し方のクセのようなものですから、いきなりできるものではありません。ただ、このようなことを意識して繰り返しているうちに、その場しのぎに相手の考え通りに行動しなくても嫌われるようなことはないということが分かってくるはずです。そして自分の気持ちや考えを抑え込まなくていいので、結果的には正直な気持ちを伝えた方が、お互いにとって楽だということに気づくでしょう。そして、一度それが楽だということに気づけばそのような行動は意識しなくても続けられるようになります。

 

 

さらに、このような経験をこれまでにされてきた方は、裏を返すと、他人の気持ちをよくわかるということですから、それは強みにもなるとも考えることはできないでしょうか。特に人と接する仕事をされる方は、相手が本当は何を考えているかということを想像することがいつも求められます。自分の考えをしっかりと尊重しながら、相手の気持ちを考えるようになれば、このような性格というのは自分自身の仕事のやりがいにも繋がるでしょう。 そのような性格は長所だともいえるのです。