JSここメン | 公益社団法人 全国老人福祉施設協議会

高ストレスな人の気づき方

こんにちは、産業医の得津です。

 

ストレスチェックが実施された職場も多いのではないでしょうか。ストレスチェックは、ストレスに関する質問票(選択回答) に労働者が記入し、それを集計・分析することで、自分のストレスがどのような状態にあるのかを調べる簡単な検査です。

 

ストレスチェックは大別すると、①仕事のストレス要因(ストレス原因)に関する項目、②心身のストレス反応(ストレスによる心身の自覚症状)に関する項目、③周囲のサポート(労働者に対する周囲のサポート)に関する質問項目からなっています。

 

「高ストレス」かどうかは、上記の②心身ストレス反応に関する質問の評価点数が高いことや、②心身ストレス反応に関する質問分類の評価点数が一定以上あり、①仕事のストレス要因、③周囲のサポートの評価点数が高い場合など、これらの点数や面談の状況等を考慮して判断することになっています。

 

ストレスチェックの結果が高ストレスとなってしまった方もいらっしゃるかと思います。ストレスチェックは、まずはご自身がそのストレスの状態に気づいてもらうことを目的としていますので、第三者にその結果が知らされることはありません。ですから、周りの方が高ストレスかどうかはお互い知ることはできないようになっています。

 

とはいえ、部下の方や周りの方が高ストレスになっているのではないかと心配されるかたも多いと思います。ストレスが大きいときは周りの配慮が必要な状態ですが、周りが気づかなければ配慮することはできません。実際、他の方が高ストレスだったときにどのように気づいてあげればよいのでしょうか。

 

まず、高ストレス状態は様々な症状や行動を生じます。大きく分けて、落ち込んで活気が無いように見えるか、あるいはイライラしているように見えるのですが、実はそのようなメンタル面の変化がわかりにくいこともしばしばあります。本当は元気がなくても元気が有るようにふるまったり、イライラしていても表にはその感情を出さないようにしようとするのが一般的だからです。

 

これに加え、現在はマスクを常時装着していますので、お互いに表情がつかみにくくなることも多いですし、時差出勤やテレワーク等によってそもそも仕事以外のコミュニケーションをもつ機会がすくなくなっているということも、メンタル面の変化に気づきにくい要素となっています。

 

ですから、メンタル面以外でも気づくべき点を知っておく必要があるでしょう。それは、業務効率が落ちたり、集中力低下によるミスが多発するなど、仕事がうまくできなくなったような状態です。場合によってはやる気がなくなったりサボっているように見えることもあります。

 

そしてこのような点に日頃から気をつけておかなければならないもう一つの理由は、このような仕事がうまくいかなかったりサボっているように見える人に対して、上司や同僚としては厳しく指導や注意してしまうことがしばしばあるからです。

 

本人としてはなんらかの精神的負担により仕事の効率が落ちて悩んでいるわけですが、これに厳しい指摘が加わることでさらなる負担が生じて一気に症状が悪化してしまうことがあります。

以前よりも急に活気がなくなったりイライラするようになっただけでなく、仕事面でミスが生じたりやる気が無くなったように見える場合は、ひょっとして抗ストレスかも知れないということを念頭において状況を確認しなければなりません。

 

そのためには、その人の普段の状況をしっかり知っておく必要がありますから、自分が上司として新しい職場に異動してきたような場合は元々その職場にいらっしゃった方に様子を伺うなど十分に気をつける必要があります。

 

また高ストレスが疑われる人の様子をうかがう際も、いきなり仕事のことを尋ねるのではなく、生活全般の状態から話を聞き、仕事以外のストレス要因についても確認をしておくと良いでしょう。

相手に生活面のことを自然に話してもらうためには、自分からも仕事以外のことも普段から話しておくことが大切です。個人の体調管理や組織のストレス耐性をつけるためにも意識的に雑談を取り入れる必要があるのです。

 

そして、なかなか話を聞くというのが難しいと思ったときは、産業医に話をきいてもらうなど専門職を活用するようにしてください。産業医の面談は原則的に守秘されますから相談をするかたも安心して話をすることができます。

 

当サイトでは個人からの体調相談も受け付けていますが、周りに気になる人がいるなどの悩みについてもご相談いただき、皆さまの職場のお役に立てましたら幸いです。